発掘調査費だけでは終わらない 整理・保管まで見据えた事業計画とは

発掘調査費だけでは終わらない 整理・保管まで見据えた事業計画とは

発掘調査を計画するとき、現地での発掘作業、出土品の整理、発掘調査報告書の作成については、必要な人員、期間、費用が検討される。

しかし、発掘調査によって生じた出土品を、どこへ運び、どのような状態で引き渡し、誰が管理するのかまで、事業の当初から具体的に決められているだろうか。

発掘調査報告書が完成しても、出土品そのものは残り続ける。出土品を入れた箱のほか、台帳、写真、図面、測量データなども、調査成果の一部として将来へ引き継がなければならない。

ところが、発掘調査とその後の保管が別々に考えられていると、調査終了後になって初めて、さまざまな問題が表面化する。

搬入先の収蔵庫に空きがない。想定より箱数が大幅に増えている。箱番号と台帳が対応していない。写真データと出土品の関係を確認できない。最終的な数量確認を誰が行うのか決まっていない。搬送や棚入れの予算が確保されていない。

発掘調査の終了を報告書の刊行だけで考えるのではなく、出土品と関連情報が管理できる状態で引き渡されるところまで含めて考える必要がある。

発掘調査の成果は、報告書だけではない

文化庁が平成22年に刊行した『発掘調査のてびき-整理・報告書編-』は、現地での発掘作業のあとに行う整理から、発掘調査報告書の刊行に至るまでの手順を体系的にまとめたものである。ここからも、発掘調査は現地で掘る作業だけでなく、整理と記録作成を含む一連の工程として捉えられていることがわかる。

さらに、文化庁の調査研究委員会が平成9年にまとめた「出土品の取扱いについて」では、出土品を適切に保存・活用するため、名称、内容、数量、出土遺跡名、発掘調査報告書への登載状況、保管主体や保管場所などの情報を、組織的に管理する必要性が示されている。

つまり、引き継ぐべきものは、単に「土器や石器の入った箱」ではない。その箱がどの遺跡のもので、どの調査区から出土し、何が入っており、どの台帳や写真と対応し、現在どこに保管されているのかを確認できる情報も、一緒に引き継がなければならない。

箱、ラベル、台帳、写真データがそれぞれ存在していても、それらの対応関係が不明確であれば、保管後にあらためて照合作業を行うことになる。調査を担当した職員や作業員がすでに別の業務へ移り、発掘調査会社との契約も終了していれば、確認できる情報は限られる。

整理・保管費は、最後に追加する費用ではない

発掘後の保管について、「出土量が確定してから考えればよい」とされる場合がある。

もちろん、発掘前に正確な出土量を予測することは困難である。遺構の密度や遺物量は、実際に調査を進めなければ分からない部分がある。

それでも、必要となる作業項目をあらかじめ整理し、概算費用や数量変動への対応方法を検討しておくことはできる。発掘調査後の引渡しや長期保管を考える際には、現地調査や報告書作成に加え、次の作業について、既存の調査仕様に含まれているか、別途費用が必要かを確認しておく必要がある。

  • 出土品の内容確認と保管前の整理
  • 収蔵用コンテナや梱包資材
  • 箱番号やラベルの作成
  • 台帳と現物の照合
  • 写真情報との紐付け
  • 搬出、運搬、搬入
  • 棚入れと保管場所の登録
  • 外部保管を利用する場合の初期費用
  • 継続的な保管費や出入庫費

これらを調査終了後に初めて見積もると、その時点では、当該事業の予算に追加費用を組み込むことが難しくなっている場合もある。別の年度に文化財担当部局の予算を確保しようとしても、すぐに対応できるとは限らない。その結果、空いている場所への仮置きや、暫定的な箱詰めで対応し、後になってから再整理、再梱包、再搬送を行うことになる。

整理・保管費を早い段階で確認する目的は、費用を増やすことではない。後から同じ資料を何度も動かし、確認し、箱を開け直す作業を減らすためである。

事業計画の段階で決めておきたい引渡し条件

正確な箱数を事前に決められなくても、引渡しの条件は検討できる。特に、次の点は関係者間で共有しておきたい内容である。

  • 引渡し対象:土器や石器などの出土品だけでなく、自然科学分析試料、写真、図面、台帳、電子データなど、何を引渡し対象とするのか
  • 管理の単位:遺物単位、袋単位、箱単位など、どの単位まで情報を管理するのか(すべてを一点単位で登録する必要はないが、必要な資料を後から検索できる単位は確保する)
  • 台帳とデータの形式:紙台帳だけか、Excelなどの電子データも納品するのか。箱番号、遺物番号、写真ファイル名、報告書掲載番号をどう対応させるか
  • 搬入時の状態:箱の規格、重量、ラベルの位置、箱内の収納方法などを受入れ先の条件と合わせる
  • 最終確認の責任者:関係者のうち、誰が箱数、台帳、成果品の一致を最終確認するのか
  • 引渡し後の管理方法:自治体の収蔵施設に搬入するのか、別の公共施設を利用するのか、外部保管を検討するのか。保管期間や将来の出入庫、展示、再調査の可能性も含めて整理する

これらは、調査終了後に保管担当者だけで決められるものではない。発掘調査の仕様、契約、工程、成果品、受入れ先の収蔵環境に関係するため、調査計画や事業予算を検討する段階から、関係者が認識を共有しておく必要がある。

保管前の整理は、発掘調査のやり直しではない

発掘調査に伴う整理等作業と、保管開始前に管理状態を確認するための整理は、目的が異なる。

「保管前の整理」と聞くと、発掘調査時の整理作業を、もう一度行うように感じるかもしれない。しかし、ここでいう整理は、必ずしも遺物の再実測や再分類を意味するものではない。保管を始める前に必要なのは、現在存在する箱、出土品、台帳、写真、記録類の関係を確認し、移動後も追跡できる状態にすることである。資料の状態に応じて、箱数と台帳の照合、箱番号の重複や欠番の確認、外装ラベルと収納内容の確認、写真データとの対応付けなどを行う。そのうえで、搬入後の保管場所を継続して記録できる仕組みを整える。どこまで確認するかは、既存台帳の精度や、今後必要となる検索・出入庫の水準によって異なる。

文化庁の調査研究委員会が平成9年にまとめた報告書でも、当時の調査では、地方公共団体に保管されていた出土品のうち、未整理のものが約4割を占めていたことが指摘され、暫定的な仮置きや床への積み上げを解消していくためには、未整理資料の整理を優先して進める必要があるという考え方が示されている。この報告は平成9年当時の調査結果にもとづくものだが、出土品を整理し、情報と所在を対応させたうえで保管するという考え方は、現在の保管業務を考える上でも参考になる。

未整理のまま資料を移動すると、保管場所だけは確保できても、必要な資料を探せない状態まで、そのまま移すことになる。先に整理を済ませておけば、移動後にあらためて所在を調べ直す手間を防げる。

発掘調査の「その後」まで、一つの計画にする

発掘調査、整理、報告書作成、搬送、保管は、それぞれ別の作業である。しかし、発掘調査の成果を将来へ引き継ぐという目的から見れば、一つながりの工程である。

調査終了後に保管場所を探すのではなく、調査計画や事業予算を検討する段階で、何を引き渡すのか、どこまで整理するのか、どのような情報を付けるのか、どこへ搬送するのか、その後どのように管理するのかを考えておく。そうすることで、発掘調査の成果を、一時的に納品される成果品ではなく、将来確認し、研究し、活用できる文化財資料として引き継ぐことができる。

保管前の整理からご相談いただけます

アーケストレージ株式会社では、発掘調査後の出土品について、保管場所の提供だけでなく、保管前の整理、箱数や内容の確認、台帳と現物の照合、写真情報との紐付け、搬送、所在管理まで対応しています。

整理が完了している資料は、その状態を維持して保管します。一方、台帳と箱の対応が確認できない、箱番号が統一されていない、写真や記録との関係が分からない場合には、資料の現状を確認し、保管開始までに必要な作業を切り分けます。すべてを細かく再整理するのではなく、現在の管理状況と、今後必要となる検索・出入庫の水準に応じて、必要な整理方法をご提案します。

保管場所が不足してからではなく、発掘調査や事業予算を検討している段階から、想定箱数、搬送条件、整理内容、保管期間についてご相談いただくことも可能です。

出土品を単に「置ける状態」にするのではなく、必要なときに確認し、将来の担当者へ引き継げる状態にする。そのための整理と保管を、発掘調査の事業計画に含めて考えてみてはいかがでしょうか。


参考資料

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